マジメな女実業家
出会い系で会った話。
プロフからは脱サラして自分で事業してます、同世代の人話しましょうみたいな意識高い感じ。
写メ見た感じやと、どこにでもいそうな地味な感じの女の子、年は同じらしい。
プロフがほんまやったら全然興味ないしルックスも期待出来ない、とは言えちょっとはロマンスも期待してんのちゃうの?と、出会い系してるけどマジメな目的やから、出会いとかいりません、みたいな女の本性を暴けることをかすかに期待し会ってみることに。
お互いの仕事場である新宿で。
現れたのは、ほんまにふっつうーの地味な女の子。会社の事務にいたら一番目立たなそうな、学生時代とかリアルに園芸委員楽しんでましたみたいな。
あー、なんもないな、今日はと思わせる登場ぶりやった。
しかしここで諦める訳にはいかん。
適当にカフェバー的なとこに入り、俺はビール、彼女はモスコミュールで乾杯。
とりあえず、こちらから色々と褒めていく。なんとなく打ち解けたところで話の主導権は彼女に。
夢はマスコミで、スポーツマンなんかの映像を撮ってドキュメンタリー作品を作りたい、そのために会える人をアプリで探している、いまはコンサル的な仕事を独立してしているみたいな、マジの人脈作り寄りのやつやった、いや確かにたまにそんなプロフのやつも見るけども。
そしてなぜ俺と会おうと思ったか。
それは俺が「趣味があえば飲みましょー」みたいな、仕事もしっかりしてプライベートでは楽しいこと探してます、素敵な出来事探してます的な爽やか好青年風なプロフで、ラインでもスポーツ見るのもするのも好き〔これはまじ。〕でっす!!的な詐欺のやりとりをしていたからやった、、、
ミイラ取りがミイラになったとはこのことか、、、意識高い風女子の下心見たろうと思ったら完全にこちらの下心が見られてるやんと。
それでもどこかに糸口を見つけようと、話を真剣に聞くフリをする。
俺はフリーのライターの企画を聞く雑誌編集者のようだっただろう。
酒が進むにつれ多少女子感のある話も飛び出したが、そこまでやった。
「また時間合えばね」
「うん」
二度目は確実に無いだろう。
悔しいような、なんとも言えない感情があった、あ、敗北感か、負けとか無いけど。
彼女の夢や活動に別に心撃たれた訳ではない。
彼女より可愛い子はたくさんいるし、むしろルックスだけ見たら抱きたくなるような子でもない。
ただ、目の前で彼女が語ったことには嘘偽りは一つもなく、そんな純度100%の彼女の心の奥は、ゲスく染まった俺の世界からは霞んで見えないだろう。
そんな自分のちっぽけさを突きつけられたような気がした。
毎日していたラインはそれ以降来ていない。
もちろんこちらからも送ることはない。